2020年11月30日のまちかど情報室のテーマは”残った食材 活用します”、12月7日は”南極料理人の食材活用術”でした。教えてくれたのは元南極料理人 調理師 渡貫淳子さん。
渡貫さんは2015年からおよそ1年間、昭和基地の南極料理人として毎日30人分ほどの料理を作り続けました。条約でゴミの廃棄が厳しく制限されている中で、全部使い切らないといけません。独自の食材活用術を編み出しました。
残った食材活用術
とにかくそこにある材料で作るということを考えます。新たに何かを足すのではなく、あくまでもあるもので混ぜてみる。そうすると、意外な新しい組み合わせができてくるので、おもしろいと思います。
残り物はおにぎりにする
例えば、天ぷらを作るときに出る天かすと余った天つゆがあったとします。ご飯を天つゆで味付けして、そこに天かすを入れておにぎりにします。
さらにそこに加えるのは、厨房に余っていたあおさのり。あおさのりを入れて作ったところ香りもよくなって、見た目も緑色が少し映えました。
この天かすのおにぎりはカロリーも高く、悪魔のようなおにぎりだと話題になって、コンビニでも発売されました。
おにぎり作りのポイントは、食感と風味が異なるものを組み合わせることです。
たとえば、カレーの付け合せで残りがちならっきょう。甘酸っぱくてシャキシャキした食感に対しては、ベーコンなど、塩気があって柔らかいものを合わせます。
食感は大切です。食べている途中で何かをカリッとかじるとか、甘酢とベーコンの燻製にしたような香りが、飽きずに食べられと思います。
焼き肉にたくあんなどを入れたおにぎりは、食感も風味も違っておいしくなります。
筑前煮を上手に活用
リメイクであることをあまり悟られないように別の料理にするのがポイントです。
筑前煮を細かく刻んで、すし飯と混ぜて、煮物の味を生かしたちらし寿司にします。錦糸卵と紅生姜を加えれば、見た目がとても鮮やかになります。リメイクと悟らせません。お稲荷さんにしてもおいしいですし、見栄えも良くなります。
意外と皆さん気づかれずに具がたっぷり入ったお寿司だと思ってパクッと食べちゃったりします。
酸味を生かしたスープにする
漬けてから長い時間がたってしまった漬物。残ってしまうと、酸味が出始めたりして余計に誰も食べてくれなくなります。合わせるといいのが、旨味の強い食材です。
例えば、椎茸の戻し汁に豚肉と漬物を入れて煮込みます。豚肉と椎茸の旨味と漬物の酸味がマッチして食が進みます。
あるものをいかに変化させるかということを楽しむ。捨てる前にちょっと考えておいしく食べる。それだけで十分だと思います。
スープやソースなどを上手に使い切るアイデア
南極では生ゴミはもちろん、排水も極力減らすよう条約で定められているので、工夫が必要です。日本ではシンクにたまった液体を捨てられますが、南極だと捨てにくいので、いかに流さずに料理に変えるかが、南極では特徴的なところです。
残った汁やソースで別の料理を
鍋でちょっと多めに作ってしまいがちな、うどんやそばなどのつゆ。その活用術はおふを使うこと。
まず、たけのこ、鶏肉などをつゆに入れて煮てから、その中におふを入れます。煮込むとおふが汁をたっぷり吸って煮物になり、汁は残りません。おふの他にも、高野豆腐を入れてもいいです。
おふは賞味期限が長いので、結構たくさん南極にありました。おふはこういう使い方ができるなという発見だったそうです。
残りがちなミートソースやカレー
鍋の縁にソースがこびりついて、洗うとききれいにするのが大変なときがあります。南極では汚れた鍋を洗うこと自体に制約があります。極力鍋をキレイにして洗わないといけません。
それを解決してくれる食材はじゃがいもです。ゆでたじゃがいもをミートソースの鍋に加えていきます。鍋をキレイにしながらじゃがいもをつぶしていきます。じゃがいもが鍋にこびりついたソースをかき取ってくれます。しかも味が染み込んで、じゃがいもの味付けになります。
これを丸めて油で揚げるとコロッケになります。ミートソース味でソースを掛けなくても、そのままおいしく食べられます。
鍋の中を少しでもキレイにしたいという思いから南極で工夫して作ったそうです。
味噌汁を煮詰めて調味料に
味噌汁の具材のうまみも溶け出しているので、それだけで十分な調味料になります。
おすすめは、バターと合わせて味噌バター風味にすること。
まずバターでベーコン、コーン、きのこを炒めます。ここに味噌汁を入れて煮詰めます。ここに入れるのがゆでたスパゲッティ。味噌とバターがマッチして、立派な一品になります。
液体や漬け汁も調味料の一つとして考えれば、もっと料理に活用できます。新しい料理の幅が広がります。
残った味噌汁は薄めて使うこともできます。いろいろな食材を入れて薄めたものに煮込むと和風ポトフになります。
スポンサーリンク
コメント